パリマッチよ、サルコジの圧力に負けてはならない
今号の特集タイトルである“リッチスタン”という言葉をご存知だろうか。これは、米国のウォール・ストリート・ジャーナルのロバート・フランク記者がつくった造語だ。同名タイトルの彼の著書(邦訳は『ザ・ニューリッチ』)はいま全米でベストセラーになっている。格差の頂点に君臨する新富裕層がいま世界に増殖し、独自の“国家”を形成しているというもので、そのヴァーチャル国家では、新しいさまざまなビジネスが生まれているのだ。数千万円もする携帯電話、超金持ちのためのコンシェルジュなど、想像を絶する世界が展開している。
今日はこの“リッチスタン”特集にも登場するフランスの週刊誌パリマッチについて、少し触れておきたい。2年前、サルコジ妻の駆け落ち事件を報じたパリマッチ。当時、編集長だったアラン・ジュネスタはサルコジの圧力によって解雇されてしまった。じつは6年前、私は彼の寛大な計らいで同誌編集部にて研修をすることができた。60年以上の歴史をもち、いまだフランスで70万部近い部数を誇る、その秘密を探るのが、研修の目的だった。彼は縁もゆかりもない私を自由に出入りさせてくれ、編集部内の“隠し撮り”がバレたときも「君は日本のスパイか」と言って笑って許してくれた。温厚でユーモアのあるジュネスタ編集長には、本当に感謝している。
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アラン・ジュネスタ前編集長 |
デスク会議。
右端に座っているのがロワイアン現編集長。
隣がジュネスタ前編集長 |
パリマッチのなかにいて実感したのは、写真に対する徹底したこだわりだ。編集部にはアンリ・カルティエ・ブレッソンのような著名な写真家からパパラッチまで、世界中のカメラマンが写真を持ち込んでくる。毎週、数千枚の中から5人のフォトエディターがじっくりと写真を選んでいく。ADの手によってデザインされ、仕上がったページは“ミュール(フランス語で壁の意)”と呼ばれるデザイン室の壁に次々と貼られる。編集長がAD、フォトエディターの意見に耳を傾けながら、締め切り間際の月曜の深夜まで入念なチェックをしていたのが印象的だった(写真下)。ジュネスタ編集長のあとを継いだのは、当時副編集長だったオリヴィエ・ロワイアン。彼は1ヵ月前、サルコジの写真に写っていたお腹の贅肉を修整することを余儀なくされた。あの老舗週刊誌の伝統はどこに行ったのか。メディアをコントロールするサルコジとパリマッチとの攻防は、これからも当分続きそうだ。
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締め切り間際、
“ミュール”で入念なチェックをする
ジュネスタ前編集長(中央) |
イケメンのフォトエディター、
ロマーン・ラクロワ(左)と
ベテランカメラマンのジャック・ラング |
10月2日 クーリエジャポン編集長 古賀義章
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