2006.May

■香港情報 mail from Hong Kong#03

疲れた時は…

今回は香港のローカル書店についてお届けする予定だったのですが、事情により来月末の書店情報でお届けすることに致します。ごめんなさい!

さて、ずっと以前に香港に長くいる友人がこう言いました。「考え事がある時や疲れた時には、ピーク*から香港の街を眺めるか、九龍サイドのフェリー乗り場の近く**から香港島を眺める」。
その話を聞いた時は確か観光客として香港に来ていたので、「キレイな夜景でも眺めて気分転換するんだろう」くらいにしか考えていませんでした。でも、自分も長らく香港に暮らすことになってみて、初めてその意味が判明。

まず、ピークでもフェリー乗り場の近くでも感じることができるのが、自然(空、海、風)と開放感。つまり、圧迫感がないんですね。日頃ビルに切り取られた風景の中で暮らしていると、知らず知らずの内に視界がぎゅぎゅっと狭くなってしまっています。それに気付くのが、香港の高層ビルよりも高い場所や、開放感のある広い場所から自分の暮らす街を眺めた時。自分の視界が狭くなっていた事にあらためて気付くと同時に、街がとても新鮮に見えるんです。別の角度から香港という街を眺めて見ることで、今まで囚われていた視点から文字通りパァーっと視界が開けるんですね。あれは目からウロコ。気分もスッキリします。


ピークからの眺め

そして、もう一つ。広々とした場所から香港のコマコマした建物の窓を眺めていると、自分を含め、このちっこい四角の中で生活している人達がそれぞれ抱える(自分では大変だと思っている)悩みまでもが、ちっぽけでコマコマしたものに思えてくるから不思議なものです。そうなると、もう色々と考えるのが馬鹿らしくなりますね。大概にして考えすぎている時は、自分の抱えていることが何よりも重大な事の様に感じるものですが、実はそれほど大した事ではない場合がほとんどのはず。遠くから客観的に街(自分)を眺めてそれに気付けること、これが大事なんだと思います。


香港島対岸のフェリー乗り場付近からの眺め

もちろん、単に夜景を見に行って気晴らしをするにもこれらの場所は最適。キレイに晴れ上がった日に眺めると、この香港の百万ドルの夜景にはホレボレしますね。NYでエンパイアステートビルディングからも夜景を堪能しましたが、やっぱり香港の方が光がギュッと詰まってキレイだと感じました。←住んでいる身なので、多少贔屓入ってます。

ちなみに、私がこうして香港島を眺めて目からウロコタイムを持った後、必ずと言っていいほど行くのがマッサージ。気持ちをリラックスさせた後は、やっぱり体もリラックスさせないと。このダブルリラクゼーション、これは効きます。
疲れた時には、どこか高い場所や広々とした場所から自分の暮らす街を眺め、その後マッサージに行かれてみては?心と体の疲れが吹っ飛びますよ!

* 香港の観光名所のビクトリアピークは意外に色々なビューポイントがあり、トラム乗り場の上からの眺めと、その先にある中国風の石庭(?)からの眺めが一番手軽な観光客向けビューポイント。ピーク頂上をぐるっと一周できる遊歩道にも絶景ポイントがあるので、もし時間があれば、是非足を伸ばしてみてくださいね。

** 九龍サイドに着くフェリー乗り場付近には、香港島の夜景が眺められるように海岸に沿って広場と遊歩道が作られています。夜景を眺めながらまったり過ごすもヨシ、散歩するもヨシ。開放感あふれる気持ちのいい場所なので、歩き疲れた時にもオススメです。

2006年5月28日
宮道伸子


■香港情報 mail from Hong Kong#02

竜宮城からの旅立ち

香港は今やすっかり夏のような日差しに夏のような気温。やっぱり今年も春は瞬く間に過ぎてゆきました。(と言うより、春なんてなかったかも?)昨年は大雨続きで、梅雨入り前の貴重な晴れ間もほとんどナシ。そのせいもあって、今年の晴天は本当に嬉しい限り。思わず出かけずにはいられない週末が続いています。

さて、この時期の香港、私の周りはなぜか今が旅立ちの時という人が多いようで、私の友達もこの1、2週間で何人かがバタバタと香港から旅立つことに。こうして立て続けに何人もが出て行くと、やっぱり香港は仮の場所なんだなあ、という思いが新たにわいて来ます。友人の多くは、いつかはそれぞれ次の場所へと旅立って行くだろう人達ばかり。そう思うと、本当に一期一会という言葉が身にしみてくる今日この頃。

不思議なもので、香港というエネルギッシュな都市は人を引き寄せる吸引力もさることながら、放出する力も同時に働いているようで(まあそうでなければ、こんな狭い場所に人が集まりすぎて大変な事になりますが…)、まるで竜巻に吸い込まれてあっという間に何年か過ぎ、竜巻の天辺まで行った人から順次放出されるという感じ。竜巻の中にいる最中は色んな事が常に起こっていて、目の前でどんどん起こる出来事に乗り遅れまい、見逃すまいとあれこれと精一杯頑張っている内に、気が付いたら香港を出る時には早○年が過ぎていた、なんてのもよくある事のよう。そうなると、歌と踊りばかりに興じるという訳にはいかないけれど、竜巻の中の香港って竜宮城みたいなところだなあ、と思ってしまう次第。

ただ、浦島太郎と違って、皆ここが束の間の場所だと分かっているからこそ、(良くも悪くも)思い切り楽しむ、やりたい事をやる。そのやる気スピリットがムクムクと起こるところが、香港のいいところ。私の周りの人達は、仕事もプライベートも楽しい事も辛い事もバリバリと全開でこなして乗り越えている人が多いせいか、「香港を生き抜いた人は、次にどこへ行っても生きていける」というのが合言葉になっています。旅立っていった友人達も、思い残すことなく笑顔で去って行きました。残された方は寂しい気もしますが、いつかは香港を去る自分も、きっと香港で鍛えられたタフさを身につけて、同じように晴れやかな笑顔で香港を旅立つはず。そう思うと(ちょっと寂しさと焦りがないと言えば嘘になりますが)、彼らのこれからの成功と幸せを祈って笑顔で送り出す私です。

とは言え、もちろん香港を去る人ばかりでなく、香港に合法的に7年滞在した人に発行されるパーマネントビザを取ったり香港人と結婚したりして、竜巻コースから外れてずっと香港で暮らしている外国人もいます。そういう人の多くは、もう本国へ戻る気はほとんどないようで、自分でビジネスをやったり、色々とここでの基盤を築いて頑張っているようです。

ちなみに香港から旅立ったその後はというと、日本人の友人は割と一様に日本に戻って安心、という人が多いようなのですが、私の周りにいる香港人以外の外国人の友人では、面白いことにまた戻って来たいと言うのは男性、香港を出て良かったと言うのは女性が多いように感じます。仕事が自分の評価や満足度につながる男性にしてみれば、香港はキャリアを積むにはとてもいい場所なので、本国よりも仕事は香港の方が面白くてやりがいがあるようです。「いつまでも竜巻の中にはいられない、安定したしっかりした家庭を築かねば」という意識が働く女性と、いつまでも現役でバリバリしたいという男の野望(?)の違いが出ていて、なかなか面白いところです。結局、竜宮城での日々は束の間の夢のようなもの。夢をあくまで追い続けたい男と現実を見つめる女では、竜宮城の捉え方も違うのかもしれませんね

2006年5月14日
宮道伸子