2006.November

■香港情報 mail from Hong Kong#11

アフタヌーンティーの幸せな午後

 香港を旅行する人の中には、アフタヌーンティーがしっかり日程に組み込まれている人も多いのでは?今回は食べ物の話、アフタヌーンティーの話題です。

イギリスでアフタヌーンティーが始まったのは、19世紀半ば。香港はそんなイギリスの影響を受け、色んな場所で美味しいアフタヌーンティーを楽しめます。フィンガー・サンドイッチやケーキで彩りよく飾られた3段重ねのトレイに、おいしい紅茶がたっぷり入ったティーポット。そんなものに囲まれて、気の置けない友人達と楽しくおしゃべりしながら過ごす週末の午後は、「ああ、香港にいて良かったなあ〜」と素直に思ってしまう、幸せなひとときです。

今回ご紹介するのは私のお気に入り、マンダリン・オリエンタル香港のアフタヌーンティー。ご存知の方も多いと思いますが、マンダリン・オリエンタル香港は1963年に「ザ・マンダリン香港」としてスタートした、香港でも指折りの格式高い老舗ホテルです。このホテル・グループは今やアジア・アメリカ・ヨーロッパと3大陸の主要都市に20ものホテルやリゾートを所有し、今後も更に世界中にビジネスを展開していくようです。本家の香港でも2005年秋に8ヶ月かけた改装工事を終了し、気分新たにスタートしています。

そんなマンダリン・オリエンタル香港は、コロニアル・スタイルが旅行者にも人気のザ・ペニンシュラに比べると、ちょっとモダンな雰囲気。ペニンシュラのアフタヌーンティーは私も好きなんですが、香港島に住んでいるのでマンダリン・オリエンタルの方がやっぱり便利で行きやすい。特にアフタヌーンティーは誰でも気兼ねなくゆったり寛げるので、私もここに来るとつい長居をしてしまいます。ペニンシュラと違って、マンダリン・オリエンタルではアフタヌーンティーの順番待ちの列を見ないで済むからかもしれません。(笑

アフタヌーンティーセットは、モダンなガラスの3段トレイに入ってやってきます。美味しそうでしょう?


Afternoon tea set: 写真は二人分

カラフルなフィンガー・サンドイッチに、
控えめな概観ながら色んな食感や味が楽しめる大満足のスイーツ・トレイ

フィンガー・サンドイッチに小さなタルトやケーキの一つ一つが丁寧に美しく仕上げられ、老舗ホテルの技と心意気を感じます。

…と言っても、実は私がサンドイッチやケーキを差し置いても楽しみなのは、バラのジャム(ローズ・ストロベリー・ジャム)。私はバラの香水や石鹸といったいわゆる「バラ製品」は好きではないんですが、このバラのジャムは別。口に入れると、ほんのりバラの香りと上品な甘さが広がります。小さなスコーンにデボンシャー・クリームとこのバラのジャムをたっぷりのせて頬張ると、思わずにっこりしてしまうくらい幸せ。(笑)マンダリン・オリエンタルならではの、お気に入りの一品です。

バラのジャムと
デボンシャー・クリーム
大きなスコーンにたっぷりと
クリーム&ジャムを載せて
堪能したい人は、クリーム・スコーン
セットがオススメ

飲み物は、いつもアールグレイのミルクティー。最高の茶葉のせいか気のせいか、私はここマンダリン・オリエンタル香港のアールグレイが一番美味しく感じます。(もちろん、好みはあるでしょうけども。)この間に来た時は友達とおしゃべりが弾んでしまい、たっぷり紅茶を飲みすぎて夜眠れなくなってしまいました。何事も限度が必要ですね…。

ということで、今回はマンダリン・オリエンタル香港のアフタヌーンティーをご紹介しました。これからも折に触れて、香港の美味しいものをご紹介していきたいと思います。そういえば、2005年12月にマンダリン・オリエンタル東京がオープンしたそうですね。香港に来る時間がない方は、まずは東京でアフタヌーンティーを試してみてはいかがでしょうか?ぜひ、バラのジャムを味わってみてください。

● MANDARIN ORIENTAL HONG KONG 香港文華東方酒店
住所: 5 Connaughat Rd., Central, HK
TEL: (852) 2522 0111
URL: www.mandarinoriental.com

2006年11月26日
宮道伸子


■香港情報 mail from Hong Kong#10

過去と未来の狭間で

 11月11日、香港の昔ながらの風景がまたひとつ姿を消すことになりました。
今回取り壊しが決まって最後のお披露目となったのは、1957年に建設されたエディンバラ・プレイス・ピアという名前を持つセントラルのスターフェリー乗り場。11日深夜24時で閉鎖した後は、同じくセントラルのIFCモール近くに新しく移転、12日朝6時半から第一便の運航が開始されました。(以下、写真はすべて最終運航日の11日夜に撮ったもの)


セントラルの新しいスターフェリー乗り場

セントラルのフェリー乗り場といえば、イギリスはビッグ・ベンの時計と同じ製造会社が作ったという時計を持つ時計台。チムサーチョイの時計台のようにきらびやかなものではありませんが、起伏に富んだ香港の戦後約50年間を静かに見守ってきたこの時計台は、香港にとって貴重な財産と言えるでしょう。しかし、香港人に愛されてきたこの時計台も、フェリー乗り場移転に伴い、取り壊されることになっています。

もちろん、この移転および時計台の取り壊しに香港人は大反対。現在ワンチャイ地区でも古い建物を壊して大規模な開発工事が行われていますが、中には歴史的建造物もあり、立ち退きが決まるまで反対の横断幕やポスターなどが貼られているのもよく見かけました。そして、九龍サイドのウエスト・カウルーン開発も物議を醸している中での、スターフェリー乗り場の取り壊し。「香港政府は交通渋滞を緩和するためと言いながら、土地を売って建物を建てる事しか考えていない」、「なぜ香港政府は香港住民の声を聞かないのか」、「昔ながらの海岸線に沿ったギザギザの埠頭が、今度はものさしで引いたようなものになるのは悲しいし、不自然だ」、「歴史はお金では取り戻せない」。大金を投入して次々と開発を続ける香港政府に、香港人も憤りや寂しさなど複雑な思いを抱いているようです。

11日夜、最後の運航となる23時30分チムサーチョイ行の最終便が出る少し前くらいにセントラルのフェリー乗り場を訪れたところ、多くの人が集まって移転反対の短冊を書いたり、音楽を演奏したり、ロウソクを灯すなど色んなパフォーマンスを行っていました。

七夕のように、こんなにビラの短冊が。



内容も言語もさまざま。香港人のみならず、観光客からの反対意見も

時計台を
惜しむ声の多さに
あらためて驚きます
地面もこの通り


音楽で反対意思を表示する若者達

黒板の寄せ書き

ロウソクを灯してお別れ

最初に移転のニュースを聞いた時は、「あ、移転するんだ」と軽い気持ちで聞きました。しかし、最終運航日が近づくにつれ、何十年間もセントラルとチムサーチョイ間を運航するフェリーで働いてきた男性の話や、20年前に初めてのデートで香港島を眺めたという年配カップルなどの話もニュースで聞き、約50年もの間セントラルのランドマークの一つとなっていた、フェリー乗り場や時計台に対する香港人の愛着の深さをあらためて知った次第です。

ちなみに取り壊された跡に何ができるかというと、高速道路とショッピングモール。何というか、香港らしいと言えば香港らしいというところでしょうか。
「ノスタルジアのために香港全体の開発に反対するのは、建設的なこととは言えない。商業都市として香港は常に変化していくべきであり、その意味で香港の都市保全とは、変化に反対し過去を保存することではない。香港を未来へとつなげていくことこそが都市保全となる」、「香港島のビクトリア・ハーバー沿岸部一帯が開発される中、ここだけ残しても意味はない」。こんな専門家の意見も聞かれる中、本日100万ドルの新時計台(鐘の音は、旧時計台のものと同じだそうです)を持つ新しいフェリー乗り場での運航がスタート。これから建物内にはレストランや展望台もできるそうで、ここも香港の新しい観光名所となるのでしょう。

個人的には、専門家の言うことも分かるような気はするけれど、歴史のない街にどれほどの魅力があるんだろう?と思ってしまいます。香港は、車と、ショッピングや食べ歩きに数日訪れる観光客のための街なんでしょうか?過去を惜しげもなく切り捨て未来へまっしぐら、なんてやっぱり寂しく感じます。香港で暮らす外国人として客観的に事実を見ようとしても、気持ち的には香港人と同じになってしまいますね。
何はともあれ、香港でまた過去と未来の狭間に居合わせたような(まあそれが「現在」なのですが)、そんな気がした出来事でした。


IFCと寄り添うようにたたずむ時計台

2006年11月12日
宮道伸子