2007.March

■香港情報 mail from Hong Kong#18

香港返還10年目、注目の行政長官選挙
  ここのところの香港は曇り空に湿気いっぱい、まさに春真っ盛り。日本では桜の咲く春が来るのが楽しみでしたが、香港に来てからというもの、天気が良くてカラリとした冬からバトンタッチされる曇りと湿気の春は、ちょっぴり憂鬱な季節になってしまいました。

 そんな憂鬱な春、香港の行政トップを決める行政長官選挙が行われました。開票は、まさに本日3月25日。実は、今回の行政長官選挙はかなり注目を集めていました。なぜかというと、過去2回行われた行政長官選挙では、立候補者は中央政府の後押しする候補者のみという無風選挙になっていたのですが、今回は香港返還10年目にして初めて、対抗馬として民主派候補が立候補したからです。

 行政長官に立候補するには、行政長官選挙に先立ち、まず選出機関である選挙委員会にて100名以上の推薦を確保しなくてはなりません。選挙委員は全800名、職能団体ごとの制限選挙で選出されるのですが、選挙委員の多くが親中派で財界に有利な制度となっているため、民主派は今まで100名以上の推薦を勝ち取ることができませんでした。しかし、昨年12月に行われた選考委員会選挙において、公民党が擁立した梁家傑(アラン・リョン)立法会議員が132票を獲得し、民主派として初めて行政長官選挙に立候補することができたのです。これを受けて出陣表明をした梁家傑議員は、「今日は歴史に刻まれる一日。香港返還後の10年間において、初めて民主派の議員が行政長官の選挙に立候補し、中共政権が支持する現職の行政長官に宣戦布告したのだ」と発言、こちらでは快挙として大きく報道されました。

 しかし、本日の行政長官選挙結果は選挙前の予想通り、中国共産党政権が推した現職の曾蔭權(ドナルド・ツァン)行政長官の圧勝。2005年に健康上の理由で辞任した董建華(トン・チーホワ)の後を継いだ曾蔭權行政長官が、そのまま続投することになりました。ただ、今回対抗馬として立候補した梁家傑議員の出馬は、初の有権者向け公開フォーラムを開いて両者の政策を表明する場を与えるなど、確実視されていた曾蔭權行政長官に自分の政策・将来の展望などを具体化させる圧力となったようですね。そういう意味でも、香港市民にとって画期的な選挙であったのです。

 香港行政長官の任期は5年、再任は1回限り。もし香港市民の求める直接普通選挙が2012年の行政長官選挙で実現化すれば、民主派から行政長官が誕生する可能性も非常に高いと言われています。普通選挙が実現したとしても、今後中央政府からの圧力、民主党と公民党の間で主導権争いによる民主派の票割れといった懸念はあるようですが、今回の行政長官選挙は、小さいながらも香港市民が望む方向への第一歩と評価してもいいのではないでしょうか。選挙後にインタビューされたある人は、「香港市民は行政長官選挙に(中央政府が選んだ立候補者のみで決まるのではなく)競争を望んでいた。梁家傑議員の出馬は選挙に小さな変化を与えただけかもしれないが、確実に大きな一歩を与えてくれた」、と語っていました。敗れた梁家傑議員は、選挙後のインタビューで「今回の選挙は終わったけれど、これは民主化への新たな挑戦の始まりでもあります」と述べ、普通選挙に関しても不可能ではない、と明言しました。

 短期的に民主化に向けた大きな変化は望めなくても、千里の道も一歩から。どうせ変わらないからと簡単には諦めない、香港の力強さを感じます。政治に無関心な人が多い日本も、こういった部分は大いに見習いたいものですね。

 ちなみに、今回行政長官に選ばれた曾蔭權行政長官は敬虔なカトリック教徒として知られ、また蝶ネクタイを愛用していることでも有名です。おかげで、一部の人達に蝶ネクタイの流行まで生み出しました。自らを「香港ドリームを実現した貧しかった少年」と称し、トレードマークの蝶ネクタイと合わせて市民に親しみやすいキャラクターを作っていることも、彼の人気の秘密でしょう。私はピーク周辺をハイキングしていた時に、セリーナ夫人と散策している曾蔭權氏にバッタリと遭遇したことがありますが、さすがにその時はトレードマークの蝶ネクタイなしのラフな格好で、仲良く散歩をされていました。とはいえ、ボディガードに前後を警護されて、夫婦で散歩というプライベートな時間も衆人環視の中。夫婦喧嘩もオチオチできなくて大変だろうなあ、なんて事をチラリと思った記憶があります。まあ、それも本人の選んだ道。これからの5年間、より良い香港のために頑張って頂きたいものです。

2007年 3月25日
宮道伸子


■香港情報 mail from Hong Kong#17

Art Walk アートを探そう
 「香港にはアートが足りない!」。これは、香港在住のアート好きが折りに触れてもらすこと。私はフランス情報の荒木さんのようなエキスパートではありませんが、絵が好きで色んなところでよく美術館めぐりをしたものです。なのに、香港に来てからはサッパリ…。美術館もないし、ギャラリーはあっても何だか入りにくいしで、気軽にアートに親しむ機会がほとんどありませんでした。おかげで、元々少ない私のアート・エナジータンクはすっかりカラッポ。

 そんな時、友人に誘われてArt Walkに参加してきました。今年で7年目を迎えるArt Walkは、香港で一番大きなアート・チャリティ。参加費用を払ったArt Walkersは、主催者から協賛ギャラリーの位置が記されたギャラリーマップ、各ギャラリー紹介の入ったパンフレット、そしてArt Walkerである目印のバッジを渡され、個人・仲間同士で地図を頼りに好きなようにギャラリーを歩いて回ります。そしてギャラリー側は、ワインやソフトドリンクといった飲み物、お菓子やサンドイッチなどの軽食を用意してArt Walkersをお出迎え。(まるでマラソンの給水地点のようですよね。)いつもは静かなギャラリーも、この日ばかりは次々に訪れるArt Walkersで賑わい、街のあちこちでちょっとしたギャラリー・パーティが開かれているような、華やかな空気に包まれます。


Art Walkのパンフレットにバッジ。
各ギャラリーから集めたカードやパンフレットもかなり集まりました。

 昨年このArt Walkから香港の人権団体に寄付された金額は、およそ1000万円弱。そして、今年の協賛ギャラリーは昨年の41店舗を上まり、50店舗となりました。結構大きなイベントでしょう?地上階にないギャラリーにとっては、このArt Walkは自分達の存在をアピールする絶好のチャンス。また、ほとんどのギャラリーがセントラル地区に集中していますが、ワンチャイやハッピーバレーなど他の地区へも無料のシャトルバスが出ているため、少し離れたところにあるギャラリーも、Art Walkは良い宣伝チャンスになるのです。

個性的な作品を展示する
SOHOのギャラリー
ギャラリー内は
パーティでにぎやか

 私は以前からこのArt Walkに一度は参加したいと思っていたのですが、なかなか腰が上がらず現在に至っておりました。参加費用が420ドル(約6300円)と、ちょっと高めなのも迷っていた理由。でも、今年はヤル気満々の友人達に誘われ、ついに参加を決意。Art Walkは水曜の17時〜24時に行われましたが、仕事のある私達は19時くらいからギャラリー・ホッピングを開始。19時からでも、深夜まではたっぷり5時間あります。平日なので24時まで歩くかどうかは不明のまま、とりあえず歩くのはセントラル地区限定でいざ出発!

 SOHO界隈からスタートしたところ、ギャラリー同士が近接しているので思った以上にホッピングが簡単。こうして数時間で多くのギャラリーを訪れることができるのも、狭い香港島ならでは。道にはギャラリーマップとワインの入ったプラスチックカップを片手に歩いている人も多く(実際、その晩SOHO周辺の道行く人のほとんどがArt Walkers)、まるでパーティ・ホッピングをしているよう。各ギャラリーの中にはArt Walkersはもちろん、時にはアーティスト本人もいて、なかなか華やいで楽しいArt Walkでした。平日のパーティもいいものですね。

次から次へと訪れては
絵と会話を楽しむArt Walkers
アジアのアーティストの作品は、
明るく優しい色使い

 こうして色んなギャラリーをホッピングしている間に、時間はあっという間にまさかの24時!おかげでセントラル地区にあるほとんどのギャラリーを踏破することができましたが、最後のギャラリーを24時ギリギリに訪れた時には、もう鑑賞力もない程にクタクタ。数々のギャラリーで美味しい軽食やお菓子をつまんで歩いたおかげで、お腹はパンパン。ついでに、色んな作品を楽しんだおかげで、私のアート・エナジータンクも満タンになりました。最後あたりはもう意地で歩いていましたが(笑)、終わった時の達成感はひとしおでしたね。そして、Art Walk効果でこの夜売れた絵も多いようですので、深夜までオープンしていたギャラリー側も満足したことでしょう。

不思議なフィギュアに、
漫画チックな絵が妙にマッチ
作品のアイデアは、
ターミネーター…??
 こうしてArt Walk体験をしてみると、「香港にはアートが足りない!」と思っていたものの、香港もなかなか捨てたもんじゃないなと再発見。気軽に入れそうなギャラリーも発見したし、ギャラリー・ホッピング中に今まで気付かなかったオシャレなレストランやバーも発見したしで、個人的な収穫もありました。老体ゆえ翌日は大変でしたが、とても楽しいアート・ナイトとなりました。観光客が参加しても、十分楽しめると思いますよ!

 …ふと思いましたが、色んな書店をはしごするBook Walkや、ワインや軽食と共に本好きを集めて様々なテーマで本を紹介する、気軽なホームパーティ形式のBookworm Nightなんていうイベントがあったら面白そうですね。(Book Walkは1店舗に居座る人もいるかもしれないので、ちょっと難しいかな?)本屋さんに興味深い本を紹介して頂くだけでなく、本好き同士の交流を取り持って頂くというのも、なかなか粋かもしれません。

2007年 3月11日
宮道伸子