■香港情報 mail from Hong Kong#22
本当にモウマンタイ?
香港人のよく口にする言葉に、「モウマンタイ」があります。これは漢字で書けば「無問題」、つまり「問題なし」、「大丈夫」という意味。ストリート・マーケットで何か買う時にふとアラが目について大丈夫かと聞いてみても、「モウマンタイ、モウマンタイ!」。仕事で本当に納期に間に合うのか聞いてみても、「モウマンタイ!」。自信たっぷりに、笑顔で答えてくれます。そんな風に言われると思わず信じてしまいたくなるこの言葉、実はかなりいい加減に使われる言葉なので、うっかり信じてはいけません。…ということで、今回は「モウマンタイ!」から読む香港人考察(?)です。
香港に来たばかりの頃は、私はこの「無問題」という言葉を信じていました。というか、信じない理由もなかったので、そう言われれば「あ、大丈夫なんだ」と軽く言葉通りに受け取っていました。でも、大丈夫と言われたはずのモノは壊れるし、納期通りに上がると自信を持って言われたデータは上がってこないし、「大丈夫、すぐ修理する人をアレンジします」と言ってくれたはずの修理人は約束の時間を過ぎても現れない…。おかげで、私は香港ですっかり疑い深い人間になりました。(笑)でも、そうする内に香港人の言う「モウマンタイ」とは、「たぶん」や「自分には分からないけど」、というセリフが抜けた「モウマンタイ」なんだと学んだ訳です。
この間香港に来たばかりの日本人の知り合いも、早速この「モウマンタイ」にやられていました。彼女は近所のお店で布団を買って、翌日の配達をお願いしたのですが、翌日になっても3日経っても一向に布団は届かない。電話で問い合わせても「今調べています。大丈夫、すぐご連絡しますよ」の一点張り。彼女はそれを信じて1週間待ちました。それでも連絡は来ないし、布団も届かない。(そこまで待つ彼女の我慢強さも大したものですが、彼女としては事を荒立てたくなかったらしいです。)布団の代金はすでに支払い済みなので、もし届かなかったら彼女の払い損。結局、周りの人の「もう直接店に出向いて問い正し、それでも分からなかったら店頭の布団をもらって帰れ」というアドバイスに従い、お店に行って布団を持ち帰ったそうです。いくら香港でもここまでルーズな配達はそうそうないので、このケースは運が悪かったとしか言いようがないんですが、まあこれもいい勉強ですね。
こんなにいい加減に「モウマンタイ」と言ってくれる香港人ですが、悪気があって言っている訳ではありません。(もちろん、大丈夫じゃないと分かっていても、「大丈夫」と言い放つ輩もおりますが。)彼らにしてみれば、とりあえずはどうなるか分からないことで相手を不安に陥れるよりは、「大丈夫」の一言で安心させてあげたい、そんな感じなのでしょう。それで、相手が納得すればあとは相手の責任。理不尽に聞こえるかもしれませんが、信じたら信じたその人にも責任があるんです。日本では自信を持って「大丈夫です」と言い切ったら、何が何でも「大丈夫」でなくてはならない。でも、香港人の「モウマンタイ」は、「自分達はできるだけの事はする。その意味ではモウマンタイ。でも、もしそれでできなかったら仕方ない」、「後でどうなるかは分からないけど、今の時点では大丈夫だと思う」。そういう感覚で使われる事が多いですね。
先々の事まで考えて心配したり、用意周到に細々と準備しようとする日本人からすると、そんな感覚で大丈夫と言い切ってしまう香港人は、楽観的というか、大らかというか、いい加減に見えてしまうかもしれません。私も最初の頃はそんな香港人に戸惑ったり、イライラしたりしたものです。でも、「あまり先のことまで考えてイライラしないで、とりあえず今、この時がモウマンタイなんだからいいじゃないか」、そんな香港人の感覚に慣れてくると、イライラしている自分の方が馬鹿馬鹿しくなってくるから不思議なものです。(笑)この達観すら感じる香港人の感覚は、いつも大国の思惑に翻弄されつつ「今、この時」をとにかく生き伸びてきた彼らに自然に根付いてきた(というか磨かれてきた)感覚なのかもしれませんね。それがいいか悪いかは別としても。
…とは言え、実際問題として仕事で日程通りに事を進めなければならない時には、香港人の感覚がどうのなんて悠長な事は言っていられません。仕事上での彼らのモウマンタイ発言はいつも耳半分、甘い部分は「本当にモウマンタイ?」と何度も確認してしまう私です。彼らにしてみれば、私は「心配性のウルサイ日本人」なんだろうなあ、と思いつつ…。
2007年 5月27日
宮道伸子 |