2008.April

■香港情報 mail from Hong Kong#37

160年以上続く香港の文化遺産、セントラルの屋外市場

 香港島セントラルは、洒落たショップやレストランが並ぶ華やかな場所。そんなセントラルのど真ん中に、1841年からずっと続いている屋外市場があるんです。このエリアの細い路地沿いには野菜や果物、肉や魚などを売る屋台が並び、地元の住人が買い物する場所としてだけでなく、香港映画に登場したり、数少ない昔の香港の面影を見ようと観光客も立ち寄る観光スポットにもなっています。しかしこの貴重な屋外市場も、ずっと以前に書いたセントラルの旧フェリー乗り場の破壊同様、香港政府の「再開発」の名の下に今や存続の危機に瀕しています。

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セントラルの屋外市場

 セントラルのPeel Street、Graham Street、Gage Street沿いに広がるこの屋外市場には、現在130軒のライセンスを受けた屋台並んでいるのですが、都市計画委員会ではこの160年以上もの歴史を持つこのエリアを開発し、狭い香港の土地を有効活用すべく高層ビルを建てようと計画しているのです。高層ビルの建物の中に市場を入れる、または地上階に市場を残してその上に高層ビルを建てるなど色々と構想中のようですが、いずれにせよ数少ない高層ビルのないエリアであるこの市場周辺の景観は損なわれ、まったく異なる風景が誕生することになります。すでに新しい屋台ライセンスの発行は止められ、土地所有者は改装・改築なども停止してこの再開発プロジェクトの行方を見守っているところなのです。

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肉屋、卵屋、八百屋に乾物屋…さすが屋台は専門店ばかり。

  香港の屋台に関する近年史を簡単に書くと、屋台ライセンスが発行され始めたのは1873年。19世紀の終わりには、香港には5661軒の屋台がありました。それが第二次世界大戦後、中国から150万人以上もの難民が押し寄せ、路上で物を売って生計を立てる人達が増えたおかげで、屋台の数が当時の13000軒から70000軒に激増。そのうち、ライセンスを保持しているのは10000軒という有様でした。それが1960年に屋台の衛生問題や障害などを最小限に抑える政府部門が設立され、1972年には屋台数を制限する政策を採択。その結果、屋台の数は一気に減ることになりました。このセントラルの屋外市場は当初Middle Bazaar(中央市場)と呼ばれていたようですが、現在このエリアに存在するライセンスを取得している屋台が130軒のみという事を考えると、まさにその貴重さが伺えます。

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美味しそうに熟したマンゴー
市場に何となく漂う果物の王様、ドリアンの香り…

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果物の女王、マンゴスチンにランブータン。日本
じゃあまり目にしない南国フルーツいっぱいです
甘い龍眼(ロンガン)
&プチトマト

 そんなセントラルの屋外市場の現状はというと、昔のセントラルには服や薬など色々な取引をするマーケットがあったそうなのですが、今はそのほとんどが失われてしまっています。また、屋台を経営する人達のほとんどが老人。50〜60代くらいの人が跡を継いでも、屋台で稼いだお金で教育を受けた彼らの子供達は屋台を継がず、他の仕事に就いて両親の面倒を見るというのがパターンになっているようです。今市場を歩いていてもそれなりに活気はあるし、見て面白いものも色々あるのですが、やっぱり昔はもっと活気があったんだろうなあ、なんて思ってしまいますね。

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中華の付け合せに必ず注文する
チョイサム。トロリとしたオイスター
ソースで食べるんですよ
新鮮ぴちぴち魚の切り身。
魚の色がカラフルなところが香港

 政府の再開発計画に反対している団体は、この地区を残す価値は非常に高いと述べています。こうした屋外市場では地域的つながりが強く、コミュニケーションも活発。ローカルコミュニティに公共の場を提供する役割を果たしています。また、活気のある市場は消費者の選択の幅を広げると同時に、観光客にとってのアトラクションにもなる。つまり、市場にとっても政府(観光局)にとっても利益があると言っており(従って無くすべきではない)、そのために再開発方針として「住人と観光客が楽しめる市場作り」を目指し、それに沿った建築、設備、交通、衛生面など諸々を考慮に入れた都市計画をしていくべきだと言っています。そして、仕事を生み出すチャンスとして、現在停止している屋台ライセンスの発行を再開し、この市場をより活発なものにしようというエネルギーに溢れた若い起業家に、この屋外市場の未来を託すべきだとも言っているんです。どこまで彼らの主張が通るかは分かりませんが、当面は署名活動を通じて政府都市計画委員会にこの地区の保存を呼びかけています。

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豆腐屋さんの屋台に置いてある
豆腐花用の大きな豆腐樽。
すくって小さなお椀に入れ、
甘いきな粉(かな?)をかけて
食べてました。約90円、安い!
醤油に、豆腐の瓶詰め??
何かよく分かりませんでした・・・

 市場について色々と書いてしまいましたが、今の香港は本当に再開発が多いんです。いつもどこかで工事をしていて、あっという間に新しいビルが建っています。ずっと以前に書いたセントラルの旧フェリー乗り場の移転もそうでしたが、昔の姿がなくなってもすぐに新しい建物で速やかに機能し始めるため、昔を懐かしむ暇もないという気がします。「昔は良かった」、なんていう言葉を言う人の「昔」も、下手すると香港では数十年単位で違ってしまうかもしれません。私が香港にいるほんの数年の間ですら、常に変化し続ける香港。いつか香港を去って再び訪れた時には、きっと違う顔の街になっているんだろうなあと思うと、やっぱり少し寂しい気もしますね。
  以上、今回はたっぷりと市場の写真と共にお届けしました。香港に来られる機会があれば、ぜひこの市場も見ておいてくださいね。

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さすが西洋人の多いセントラル、値段も英語の表記もアリ

2008年4月6日
宮道伸子