■イタリア書店事情 Monthly Report from Italy #1

〜 小さな町、ミランドラより − 天窓から初夏が差し込む、ラステリスコ書店 〜 
L’Asterisco Libreria Fumetteria Rilegatoria 
Via Circonvallazione, 4 41037 Mirandola(MO) TEL: 0535 24145

 郊外の小さな町へ足を運ぶと商店が軒並みと続き、イタリアの町、生活本来の姿を垣間見る気分になる。パン専門店、果物店、金物屋、乾物店…。そんな可愛らしい店たちを見ていると、都市の利便性はおろか、店主と言葉を交わしながら、ゆっくり時間を掛けて物を吟味する時間の楽しさを改めて感じさせてくれる。

今回は、モデナから車で30分の場所にある、のどかな町ミランドラより。

L’Asterisco(ラステリスコ)書店は人口約23,000人の町に15年と続く、地域の人々を支えきた個人書店。専門は書物、コミック、製本を掲げている。朝の在庫点検などされる中、店主のイヴァーノさんとジュリアーナさんに、書店のお話を伺った。

↑書店ロゴとウインドウ ↑レジカウンター内イヴァーノさんとジュリアーナさん

まず、店内のレイアウトをご紹介しよう。

入り口より一歩踏み入れば目の先、天窓から光が差し込む店内中央には、レジ。左手は書物、右手はコミックと、コーナーが二分化。イタリアでは印刷物を扱う店の多くは書店、コミック店、雑誌店と明らかに専門店化しているのが現状。しかし、こちらは例外である。(各専門店については後日、お楽しみを)なお、ラステリスコ書店はミランドラの町でマンガを扱う唯一の店でもあるのだ。

左手の書物コーナーは、コンパクトにまとめてあり、棚には幼児書から随筆、大判書、辞書、幅広い分野の書物が棚に並ぶ。決して広くはない店内、ベストセラーの扱いはもちろん、往年の名作も充実さもあり。この充実さの秘密は、お2人で1年を通し、本の取り揃え内容や展開を少しずつ変化させているからだ。例えば、イタリアは7月頃よりバカンス。頭も体もリラックス出来るこの時期には読みやすい作品を目立たせ、難読なエッセイなどを少し控えるのだそうだ。また取材を行った時期はイタリアにて、映画「ダヴィンチ・コード」が上演され
た頃。やはり原作は、去年の冬にかけてリクエストの嵐となった。今は少しブームが落ち着いたもの、レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯や作品の解説本が今でも人気があるため、確保してあるそう。

そして、イタリアの郷土心を表すような、町の歴史資料本もしっかり並べられている。ミランドラの郷土研究には、欠かせない資料だろう。
(写真左:「ミランドラとその周辺の歴史・芸術ガイドブック」)

一方、右手のコミックコーナーは棚が壁に据え付けられている。そして棚へ並べられない形態の物は箱の中に、ファイリングボックスのように整列されている。
アメリカのコミックの様にシリーズが永遠と続く、コレクションアイテムとなる場合は、この様に番号を追いやすい保存方法が適しているのだろう。ラステリスコ書店の書物コーナーとマンガコーナーの利用割合は、50パーセントずつ。
けれどもここで、面白い話が出て来た。イヴァーノさんとジュリアーナさん曰く「書物を求める人たちでは時々、何か良い本はないか、
と尋ねるお客様がいる。しかし、コミックを求める若者たちの場合、皆すでに何を購入するか決めて買い求めにやって来るため、マンガの質問は受けたことが無いのです。」これは明らかに書物とコミックの、シリーズであるかないかの違いだろう。
建物の天井が高く、朝の爽やかな光とそよ風が差し込む。心地よい雰囲気あふれるラステリコ書店。
最後に、イヴァーノさんが「本を愛しているから、この仕事が続けられる」、ジュリアーナさんが「私も本が好き。お客様におすすめの本を伝える時が、嬉しくてたまらない」と本への思い入れを話してくれた。
思わずそこで「実は私、この本が読みたいと思っているが…」と話をし始めてしまったのは、言うまでもない。
2006年6月16日
Photo & text by 福井エリナ