■イタリア書店事情 Monthly Report from Italy #5

〜 児童書の明日よ、来たれ ─ ボローニャ児童図書見本市 〜 
イタリア、ボローニャ市 2007年4月24〜27日開催

イタリアの中心部北部、エミリア・ロマーニャ州。
アペニン山脈の裾に広がる平野のこの州都は、大理石のアーケード「ポルティコ」で美しく縁取られ、その光景の奥にはヨーロッパ最古のボローニャ大学が存在する。人生の半ばに路を失い、暗い森の中に迷い込む、古典「神曲」を書き上げたダンテ・アリギエーリもここで学んでいると言われている。

学術の古都、ボローニャ見本市会場にて年に一度、44年も前から開催されているのが、児童図書見本市。読んだだけではお祭りの雰囲気もするが、実際にはコピーライトの商談を最大の目的としており、期間中の入場は児童図書出版関係者のみ。厳格な体制を保っている。


講談社様も、ブースを出店。お疲れ様でした!

今年の入場者数は、イタリアより9,000人以上、海外より4,521人。
出展者数は1,200(そのうち1,100海外64ヵ国より)、児童書の商談だけでこの数字は、じっくりと考えさせられるものがあるだろう。

各自のスタンドを巡っていると、いろいろな体勢が見えてくる。
大手児童書出版社による、幼児から青少年まで、映像も含めたトータルな製品を、数あるキャラクターを巧みに起用したラインアップ。

中規模なブースで図鑑やビジュアル重視の物のみを集中的に取り上げ、センスや個性化を図る出版社。
小規模ながら、幼児向けの絵本、学習帳の様に使用目的が明確にされている物のみを取り上げる出版社など。

ぱっと見ただけの違いでも、児童図書の分野は細かい用途があり、広域があると感じる。


イタリアの、理数科学を専門とする出版社ブース。
青少年の、理数との触れ合いが必要と、叫ばれるイタリア。
関係者が足を止める量が多い。

パソコンがどこにでもあり、生活までに根付いた今。児童図書分野では一体、この現象がどこまで進んでいるのだろうか。例えば、一昔には多くの家庭に見られた、百科辞典や図鑑。今はデジタル機器の多機能性により、その地位が陰なる物になっていないだろうか。絵本は、2次元の世界。しかし、これがデジタルの世界へ飛び込めば、たちまち踊り歌う。この現象に、合理性を見ない者はいないだろう。

限られたスペースで、最大のイメージを魅せ上げるのも、個性が見えて面白い。
あるキャラクターにスポットを当てたブース作りや、色調の使い方でその得意分野や性格を積極的にアピールしている。

本棚も、ここでは展示に映えるように選択された物を良く見かける。
国別のブースになると、観光局も使用するナショナルカラーがふんだんに使われており、お国柄が伝わるのが面白い。左下は、オランダブース、右下は、メキシコブース。

こんな疑問を立てて足を踏み入れた児童図書見本市であったが、これらの予想は見本市全てを回りきらないうちに解明された。デジタルの力に頼らぬ図鑑、理数科学の書籍に力を注ぐブースが多く見られたのだ。この他にも児童向けの外国語教育本を扱うブースがあったが、こちらも「書いてみる」に重みを付けたテキストブックであったのだ。
外国生活を経験した方には十分理解出来るであろうが、ヨーロッパ語で育つ子供達は、スペリングの厳しい教育が待ち受けている。例えば、イタリア語は比較的ローマ字の様に、発する音と書く文字に大差がない。一方、これが英語・フランス語等になると、この差が容赦なく迫る。「書く」という過程を行わなければ、自身が話す言葉の真髄に触れられないのだ。


見本市で、一際美しかった本棚。とても手が込んでおり、横側に本が入る。

言葉は映像を見るだけでは、完成がされぬ。こんな声がこだまで聞こえてくるようだ。そして、本に散りばめられた文たちは、美しいイラストと共に、ボローニャから明日の子供たちの手へと、旅を始めるのだろう。豊かな可能性に、終結はないと言うように。

ここは書籍見本市であり、書籍だけが見られるのは確か。それでも本の必要性の原点を突きつけられることで、新鮮な気分になる。書籍は、学ぶためにあると。

*次回はボローニャ児童図書見本市にて、明日を開拓する絵本イラストレーターたちの様子について、レポートをする予定です。どうぞ、お楽しみに。

2007年5月29日
Photo & Text by 福井エリナ
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