2008.March

■イタリア情報 mail from Italy #56
〜 再会 〜


最近、しばらく会っていなかった友人と再会しました。
この友人、壮年のイメージそのままの男性で、職場で豊富な経験をしていることから、私がイタリアという国を無駄無く理解していくには、貴重でとてもありがたい存在です。

前から会う度に定年退職について触れており、仕事はあれからどうしたのだろうか、私の元気な姿も見せなくては・・・。と、気に留めていた矢先、モデナの目抜き通りでバッタリ遭遇。
すれ違い様に、お互い顔を180度回転させて「あれーっ!」
その場ではちょっと立ち話をして、また近況報告に後日会おうとなったのです。

それから後日、バールでエスプレッソとお菓子をつまみながら話は進み、お互いの家庭の事、健康の話、何でも食べて飲むこと、定年退職を早めた決意など、話は多彩に進みました。

友人の正確な年齢は覚えていませんが、60歳は迎えていないため、リタイア組としては若い世代に部類するはず。部下たちからも常に頼られていた、味ある「いい上司」だったはずなのに、なぜ?

そんな一歩早い定年退職の理由を私から聞かなくても、友人自らが進んで細部まで説明をしてくれました。
それは、大切な奥さんの健康管理のため。月に数度、重い頭痛で寝込んでしまう奥さんのために、彼女の手と足となることにしたのです。

「俺は何をどれだけ食べても飲んでも平気だけど、夫婦2人揃って穏やかに過ごすことが出来なかったら、先はいいリタイア生活にならないよ」

しかし、まだ働ける体力の持ち主。けれどもシルバー雇用な契約型に切り替えると、今の年金額から月500ユーロ減額。息子さんも1人暮らしを始めて、自分自身が健康なうちにやれることはやろうと、奥さんのためにと意志を固めたとか。

話の途中、小さな仕草に職場への恋しさを感じているような表情も見受けられましたが、それはほんの1、2秒のこと。
以前会った時に比べると、つっかえ棒が取れたような清清しさで、表情に暖かみが増したよう。今までと異なる、新しい春を迎えようとしているのが分かりました。

2008年3月31日
Text by 福井エリナ


■イタリア情報 mail from Italy #55
〜 卸売市場ショッピング 〜


今回は、食べ物の話題です。
イタリアにも地方ごとに食品の卸売市場があり、週に数度、午前に一般開放がされます。今回はその現場へ行って来ました!

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このモデナ野菜・果物卸売市場の仕組みは、ほぼ全ての物がケース売り。お値段はケース上の紙に書いてあり、一目瞭然。どの一般客も重いケースを「持って帰れる」装備をして、駆けつけて来ているのです。

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↑人ごみから写したら、ダイコン!
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お買い物カート、倉庫に使うような頑丈なカート、人人人の渦中で、箱一杯のバナナが目の前を横切り、レタスが後ろを通り過ぎ、横のご婦人が「あちらのオレンジの方がいいわねぇ」と話し、360度がイモ洗いの光景です。

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ケースで買うと、どこにも負けない経済的な価格でも、問題はその量。大きく立派なナス10本や、セロリ5本を買ってしまうと、少人数の一般家庭ではその週、ナスとセロリばかり延々と食べ続けることに・・・。そのため多くの購入者は、ケースでどっさり買った後に、家族やお友達と分け合い、上手くやっているよう。

それでも市場内、ほぼ全てがケース売りと記した通り、グラム売りをされるコーナーもあります。近郊の農家の皆さんが野菜等を持ち寄るため、品揃えは季節物が中心ですが、中にはあまり見ることが無い不思議な野菜や、タンポポの仲間に当たる菜っ葉もありました。

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農家の一軒からニンジンを少し分けてもらったところ、使われたのが、画像の通り大きくて古めかしい秤。失礼なところ、その外見から遠くから見た時は「何かの記念に設置されているんだろう」と思っていたのが、ちゃんと正確に動いており、驚きました。

こんな一般開放がされる地方卸売市場、ミラノなどでは野菜・果物の他に魚市場もあるそうですよ。この光景も活気がありそうで、面白そうですね。

2008年3月18日
Text & Photo by 福井エリナ


■イタリア情報 mail from Italy #55
〜 靴修理屋さん 〜


モデナでも桃の花が咲き始め、あちらこちらに春の色合いを目にするようになってきました。皆さんの地域では、いかがでしょう。

新しい職場、新学期等、「新」が付く春の時期に備え、新しい靴を準備された方もいらっしゃるでしょう。そこで、ちょっと靴に触れる話題を。

イタリアは多くの方がご存知の通り、靴で知られた国です。
伝統的な靴、スマートな形の靴、「これは一体誰が履くのだろう?」とギョッと思わせる靴、数が豊富すぎて一言では表現出来ないほど。

ところが先日、そんな靴の国としては興味深い話を聞きました。
それは靴修理屋さんの数が、高齢化や安価な靴の出現により、少なくなっているというのです。

しかし、ここで意味する修理屋さんは「30分スピード加工!」ではなく、工房を持ち、ヒールカットやソール張りなおし、幅の調整など、一歩特殊な作業まで対応可能な店のこと。

そんな工房数の減少、確かに言われてみれば、そうかもしれません。数年前までは街の路地裏に、修理例の靴が並ぶ工房をちょくちょく見かけたもの。中をチラっと見ると、大体は年配の方が背中を丸めて作業をしており、靴底をコンコンと叩く音が聞こえ、そこだけ異なる時間が流れている、そんな光景が見られたものでした。

では一方、スピード加工専門の様なチェーン店がぞくぞく進出しているかと思うと、そうでもないよう。純粋にその修理職人数が減っており、料金も値上がる方向であるとか。

ちょっと寂しいお話ではありましたが、イタリアの靴によくある薄い靴底は、ゴムを張ることで、将来の「穴あき」を防げます。
本来ならば革で出来た靴底で使うのが本望ですが、アスファルトを歩くなど、靴の使い道が分かっている場合、オススメな補強法です。

2008年3月11日
Text by 福井エリナ


■イタリア情報 mail from Italy #54
〜 モデナから約3時間半の異次元 〜


3月になり、春が一層近くなりました。今回は、トレンティーノ=アルト・アディジェ自治州でのスキー旅行と、少しゲーテにも触れる挑戦をしてみたいと思います。

南へも北へも、雪山アクセスに恵まれたモデナ。今年も男性諸君から「年末から出歩いていないよ、スキー行こ!」な声が挙がり、車で約3時間半のボルツァーノ県はプステリアまで足を伸ばしたのです。

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高速道路はモデナから、ブレンナー峠に向け北上。途中ブレッサノーネで西に折れ、プステリアに到着すると、そこは独語・伊語・ラディン語が公用語。旧オーストリア領で、第一次世界大戦後にイタリア領となった地方です。
厚い氷がガッチリ固まった駐車場で荷物を降ろし、民宿へあいさつに行くと、迎えてくれたのは外出中の女将さんに代わり、年配の女性。彼女は伊語を話すことが出来ないと言われ、わずかな英語で宿の仕組みを説明してくれたのでした。

モデナの商店閉店時間は7時半。それに対しここは6時台。1日の流れもドイツ圏流なんですね。日没が訪れると澄んだ空気の向こうには、美しい暗黒の夜空が、音も無く広がっていました。

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次の日。男性諸君は、モンテ・エルモでスキー。5分おきに前方が霧で真っ白になる天候で、ドロミテ山脈大パノラマも望めず。私はレスト
ランで本を読んでみたり、人々を観察したり・・・。ちなみにスキーヤー達が選ぶ人気メニューは、ザッハトルテ風チョコレートケーキとフライドポテト。辿り着く末は、デザート界とスナック界の王道なのでしょうかネ!

2日目。この日は私も雪中に繰り出し、クローダ・ロッサでソリ滑走。5Kmの上にヘアピンカーブが続くソリ・コースは、面白い!しかも「ソリ」とは書きましたが、実際はリュージュに近いソリで、すぐにスピードが出ること!大自然+速度感+物理の授業+スリルが混ざった爽快さで、2本滑り終えた時にはヨロヨロ・・・。

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一方、夏は光と色彩に溢れるドロミテ山脈

こんな風のスキー旅行でしたが、持って行った本のうち、ゲーテの「イタリア紀行・上巻」があります。ゲーテはインスブルック、ブレンネロを経由してイタリアへ入っており、今回私たちの旅は方角が異なるもの、同じ文化・言語地帯内。

イタリア、トレントの街に辿り着くまでの、数ページ。岩山の表情、時の流れ、イタリアへのあこがれ・・・。煙たくなるような高貴な言葉でつづられても、文面のたったの一言も、約190年後の今日もその光景が変わりなく目の前にある。こんな体験から、イタリアの国がまた違った視線から見る事が出来る。そんな気がするのです。

2008年3月4日
Text & Photo by 福井エリナ