2003.April

 

■メール・フロム・ニューヨーク #4

 イラク戦争のニュースが落ち着き始めたと思ったら、最近テレビにはニューヨーク市の財政難が引き起こす市民への影響の話題で持ちきりだ。9・11テロ事件と景気後退、さらにイラク戦争で国が莫大な予算を使ってしまい、そのしわ寄せがニューヨーク市にもきているというわけ。ブルームバーグ市長の予算減案を見てみるとかなりシビアだ。まず小・中・高校の教育現場での約1600名もの教育アシスタントの人員削減。サマースクールをなくし、学校の統廃合もされる。市営の小児科診察所30のうち12箇所の閉鎖。ゴミ回収も週3回から2回に減る地域もでてくる。
 観光客にも影響がでそうだ。安全な街になったと言われているニューヨークだが、街を守ってくれていた警察官や麻薬捜査官も半減する。憩いの場である公園も管理人数を減らし、その影響で運動場や公共トイレが使えなくなったり、荒れていく可能性もでてくる。(セントラルパークは個人の寄付金で支えられているため影響はないそうだが。)地下鉄やバスの値上がりは決定しているし、美術館を運営している団体への予算も約30%カットされ、イベントがキャンセルされたり開館時間が短くなるなんて影響もでてくるようだ。
 この案がすべて可決されたわけではなく、州と予算を交渉中ではあるが、「街の安全さえも脅かされて70年代のニューヨークに戻るのでは…」なんて不安の声も聞こえてくる今日この頃だ。 。

April 20. 2003
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #3

 先週末はニューヨークを離れフィラデルフィアに行ってきた。ニューヨークから特急電車アムトラックで約2時間の都市フィラデルフィアは、アメリカ合衆国独立の地として知られ、その歴史は意外にも深く博物館や美術館も数多い。  まずは最近よくテレビ番組で紹介され気になっていたミュター美術館へ足を運んだ。ここはフィラデルフィア医科大学の医療関係の美術館で1800年代の医療器具をはじめ、100個以上もの頭蓋骨の標本、皮膚のサンプルや写真が生々しく展示されている。(蝋のサンプルも多いのだけど。)その中でも人々が誤って飲み込んでしまったものの標本棚は興味深い。魚の骨なんかはありえそうだが、中には3センチほどの安全ピンや画びょう、入れ歯など見ているだけで息苦しくなってしまうものも。館内は30〜40分程でまわることができるほどこじんまりとしたスペースなのだが多くの人が訪れ、この奇妙なコレクションを目の前にジッーと神妙な様子だった。世の中には珍しい美術館もあるものだ…と思いながら外に出ると、地元の人が「ここで結婚式を挙げるのがちょっとしたステイタスになっているのよ」と話していた。う〜ん、お呼ばれしたらちょっと考えちゃうかも。

April 14. 2003
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #2

  サマータイムが始まった。サマータイムは、Daylight Saving Time(DST)とも呼ばれ、夏の間、昼の時間を長く使うことができて楽しむこともできるし、照明や冷房の省エネルギーなどの効果もあるとか。4月の第一日曜日の午前2時から10月の最終日曜日の午前2時までがその期間になり、真夏になると夜9時ぐらいまで外が明るくて、用事が無くてもウキウキとマンハッタンを歩きたくなる時期でもある。
 始まってしまえば嬉しいサマータイムだが、その開始日と終了日には充分に気を付けなければいけない。私は留学当初大恥をかいてしまった経験がある。
 あれはサマータイム終了の日曜日だった。部屋中のすべての時計を1時間前にセットしなおし、アラームもしっかりセットしたにもかかわらず、目が覚めたると時計が"0:00"で点滅していたのだ。「ゲッ!なんでよ!」ケーブルTVの時計も、ビデオの時計もパソコンだって携帯の時計だって賢くも自動的に1時間早まっていたにもかかわらず、なんと、こういう時に限ってプラグが緩んでいたとは。「そりゃ、体内時計はすぐには戻せないよ…」とダシュで学校に向かった。それまで遅刻も欠席もしたことがなかっただけに、サマータイムのせいで遅刻したことはバレバレだ。ソロソロと教室に入り着席し、恐る恐る先生と目をあわせた瞬間「グッド、イ〜ブニング!」クラス中が大爆笑。私もヘラヘラと笑うしかなかった。
 あの時のことを思い出すたびに恥ずかしくて、サマータイムの開始日と終了日には特に神経質になる。このことを友人のポーラに話すと、ネイティブのニューヨーカーにもたまに起こるらしく、月曜の朝に息せき切って会社に到着する人、さらにはサマータイムを理由に意図的に遅れてくるズルイヤツも結構いるという。「あぁ、よかった。ネイティブでもそうなんだ…」と少しは救われたと思った瞬間、「でもみんなの反応は冷たいわよ。マヌケ!って感じの視線を投げつけるし…」とポーラ。
 はい。今年はマヌケなヤツにならないように、気をつけます。

April 05, 2003
明日の天気予報は終日"雪"。 サマーよ何処。 前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #1

 こんにちは、前田直子です。今回からこのページでニューヨークの生活や街の様子、そして月に一回は書店さんの様子も紹介していきたいと思うのでどうぞお付き合いください!
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 私がニューヨークに住み始めて約2年が過ぎようとしている。危険なイメージが強かったこの街も、住み始めた頃は犯罪の危険を全く感じないほど安全になっており、長年の憧れでもあったニューヨーク生活をエンジョイしていた。四ヶ月目、ちょうどこの街に慣れてきた頃に起きたあのテロ事件、そしてこのイラク開戦と、留学当初には考えもしなかった歴史的事件に遭遇してしまった。事件直後はさすがに「どうしよう…」と不安になったりもしたが、ここはニューヨーク。ヒューマン・パワーに支えられ、それに3人姉妹の末っ子で育ったこの性格も加わり、学生生活に相変わらずバタバタと刺激的な毎日が続いている。
 3月20日に英米軍のイラク攻撃のニュースが流れた日は、ちょうど学校がスプリング・ブレイク(春休み)の週だった。「月曜日にはこの話題でクラスは持ちきりなんだろうな〜」と思っていたら、意外にも"WAR"の"W"の字もでず…。9・11からニューヨーカーは精神的にタフになったと言われているが、全くその通り。独立記念日やクリスマス、年末年始のカウントダウンとイベントがあるたびにテロのウワサが流れ、常に心のどこかで警戒することが組み込まれてしまった。特に"警戒する"と言っても難しいことだが、私が行っているのは地下鉄ではキョロキョロと辺りを見回し、混んでいる車両には乗らないようにしているくらい。この戦争が始まる数週間ほど前からも、ニューヨークにはテロ警戒警報が危険度オレンジ(5段階のうち上から2番目)が出され、主要駅や街にはマシンガンを持った兵士や警察官が目立つようになり、その時から緊張感は漂い始めていた。なので開戦のニュースはショッキングなことではあったが、9・11の後と違ってどこかに冷静さもあったのだ。
 週末の反戦デモには3キロにも渡る人々でブロードウェイは埋め尽くされた。「タイムズ・スクエアからダウンタウンのワシントン・スクエアに向かって、徐々に人々が集まっていつの間にかこんなに人が歩き始めたんだよ」と偶然会った語学学校時代の友人でありカメラマンのCさんが話してくれた。人種を越え、性別を越え、年齢を越えプラカードを持ち反戦を唱え踊り歩く人々を目前に、私はただ呆然としてしまった。これから世界はどうなってしまうのだろう…。
 イラク開戦から、というよりも9・11から大学にも影響が出始めている。戦争が始まってしまったことで、私が通っている大学の学部長はがっくり…。「今まで学生のうち約25%を占めていたインターナ・ショナル・スチューデントが、これから当分は入学を控えてしまう」と…。確かにこの時期わざわざニューヨークに留学を考える人はあんまりいないだろう。戦争の影響はこんなところにも出ている。

March 30, 2003
雪のチラつくニューヨークより 前田直子