■メール・フロム・ニューヨーク #11

 ニューヨークは連日雨続き。雨の日に履いていく靴にはいつも悩まされ、ついつい外に出るのが億劫になってしまう。ニューヨークの道路はもの凄く悪くて、車道と歩道の間に水が池のように溜まり大回りして歩道を渡らなければならないこともしょっちゅうだ。仕方なく先日レイン・シューズ買った。まぁまぁイケてるデザインなのでこれで雨の日の外出も大丈夫か。

 さて、ずっと降り続いていた雨も不思議なことに"彼のマジック"のお陰か、20日(金)の夜はピタッと止んだ。そう、6月21日(土)はみんなが待ちに待った『ハリーポッター and the Order of the Phoenix』(5巻)の発売日だったのだ。マンハッタンの児童書専門店ブックス・オブ・ワンダーや大型チェーン書店バーンズ&ノーブル、そしてトイザラスまでもがお祭りイベントを企画し、熱いハリーファンを引き付けた。
 午後11時、チェルシーのバーンズ&ノーブルに駆けつけると、誰よりも先にゲッ
トしたいファンの長蛇の列がストリートに沿ってできていた。乳母車に乗せられた子供から、ハリーに仮装してきた中学生、 そして黒ぶち丸メガネを掛けた大人までが並び待ちきれない様子。店内では無料でフェイス・ペインティングや、抽選会、ハリーの看板と一緒に写真撮影会などが行われ、みんな大はしゃぎ。
フェイス・ペインティングは子供達に大人気!
彼はハリーのキャラクターを書いてもらっているところ。
 午前12時、販売開始とともに15台はあるレジがフル回転し始めた。30分たっても長蛇の列は短くなることなく、さらにどんどん人がやってくる。その数およそ800人〜1000人と言ったところか。
  「売り切れちゃうかな…」と不安に思いつつも、私も最後尾に並んだ。と、そのとき3人組の小学生がやってきた。「これ新しい

ハリー。売るけど、どお?」と出されたのは発売されたばかりの『ハリーポッター』。なんと買ったばかりの本を売りにやってきたのだ。
 売るけど、どお?」と出されたのは発売されたばかりの『ハリーポッター』。なんと買ったばかりの本を売りにやってきたのだ。
「いくら?」と、すぐに反応したのが私の前で1人で並んでいた兄ちゃん。
「25ドル」と気の弱そうな小学生の1人が答える。
「何言ってんだよ。40ドルで売れるよ。」と最後尾をいいことに別の子が値を上げる。そんな声は無視して男は25ドルを先の子に渡し、袋の中の本を確認してサッーと去ってしまった。
 『ハリーポッター(5巻)』の定価は29.99ドルで、この書店では30%引きで販売している。儲けは数ドルだけれど、この列に並んでいる人は、『ハリーポッター』を誰よりも先に読みたいという人ばかり。まだ商売なんて知らないような小学

生なのに、その心理を知ってか、いち早く購入してそれを商売にしてしまう子供達の姿にしばらく呆然としてしまった。
 この週末、まだ雨は続いている。ゆっくりと本を読むにはいいけど、どうもあの小学生と兄ちゃんの姿が頭から離れない。
870ページもの『ハリーポッター』を購入するや否や、
待ちきれずに店内に座り込んで読み出す子供たち。

June 22. 2003
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #10

 東京から友達が久しぶりにニューヨークにやって来た。戦争やSARSも落ち着いてきたせいか少しずつ観光客がニューヨークに戻ってきている様子。

 週末はマンハッタンを離れて、レンタカーでフィラデルフィアに行ってきた。
 フィラデルフィアの街に向かう途中、いかにもアメリカっぽいドライブスルーショッピングの店を発見。外観は車庫のようだが、壁にはギラギラとビールブランドのネオンが光る。そう、この店は酒屋のドライブスルーなのだ。
 車をゆっくりと進めて店に入ると、そこはビールケースのやま、ヤマ、山。天井からは、よく見るビールのロゴやらセクシーなお姉さんのマスコット人形やらがぶら下がりそれがメニューがわりになっているよう。
 ネオンの間からバドワイザーのコスチュームを着たイケイケお姉さんがヒョコッと現れてきそうな感じだが、現れたのはタフそうなお兄さん。ウィンドーを開けペンシルベニア州のイングィンビールを1ケース慌てて注文すると、「トランク!」(←開けろってこと)とぶっきらぼうな返事がかえってきた。焦る必要もないのに、馴れないレンタカーのトランクスイッチをオロオロと探す。
本当はこんな格好で写真を撮りたかったが、 「車外に
出てしまったらドライブスルーの意味がなくなる…」
とボソッと言った友達の一言に、「そのとおりだ」
と思ってやめた。とりあえず車中からの眺め。
 注文したビールがドシンとトランクに積まれ、そのまま直進しお会計へ。会計時にチップを渡すのはここでも同じだ。レジのお姉さんにささやかなチップを渡すや否や、「グッド・ティッパー!」と大声が店内に響き渡った。チップを渡せば、誰でもグッド・ティッパーなわけだけれど、大声で叫ばれてしまうと、"もう少し弾んどけばよかったかな…"なんて雄叫びに恐縮してしまう。

それでもそれを聞いたさっきのお兄ちゃんが出口で「サンキュー!」と心からの笑顔で見送ってくれた。
 ビールを買った後は、向かいのアイスクリームのドライブスルーに寄ってソフトクリームを注文。あーラクチン、ラクチン。なんでもドライブスルーで事が足りてしまう。州は離れるがラスベガスでは結婚届けもドライブスルーで出せてしまうとか。いくらラクチンでも結婚届けぐらいはもう少し"慎重"に出したいものだが…。これもアメリカ流!?

June 15. 2003
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #9

 ストリートにはソフトクリームのトラック屋台が見え始めた。ニューヨークに夏がやって来た証拠だ。この街では女性よりも男性の方がソフトクリームを片手に歩いている姿の方が多い。スーツでビシッと決めてるのに、トラックに書かれた "Mister Softee"
のイラストイメージが重なって、なんとなくみんなオチャメに見えてしまう…

 さて、米国の大学はもうすっかり夏休みだ。と言っても大学ではサマースクールが開講され、夏の期間だけのスペシャルプログラムを受講しに全米から、いや世界から学生が集まって勉学に励む時期でもある。
 私は…というと、今年の夏は授業を取らずに"インターンシップ"を始めた。"インターンシップ"とは、学生のうちに実際に企業で働く実習制度のことだ。もちろん学業として単位としても認められるのだが、レポート提出もしっかりあるし、タダで働くのに高い学費も納めなければならいのでやらない学生もいる。人気の会社ともなれば、インターンをするのにも氷河期時代の就職活動並みで競争率も高い。企業によっては7〜10ドル前後の時給が支払われる場合もあるが、このご時世はほとんどが無給で1週間のうち3、4日働くことになる。それでも学生が血眼になってインターンを探すのには、インターンとして働いて会社に認められれば、社員への道も開ける可能性があるからだ。
 会社側にしてもタダで働いてもらうことに加えて、雇用前に彼らの仕事ぶりをチェックできるメリットもある。
 私の場合、ラッキーなことに以前から興味があった出版社でインターンとして働けることになった。アメリカでの仕事のやり方や人間関係など、クラスの中では決して学ぶことができない経験となることは確か。カルチャーの違いを実感しながら毎日楽しく働いている

June 8. 2003
前田直子