■メール・フロム・ニューヨーク #20

 秋の気配の訪れとともに、先週末ニューヨークではビッグな読書イベントが開催された。 雑誌『ニューヨーカー』が主宰する"ニューヨーカーフェスティバル"は、『ニューヨーカー』誌に掲載された作家のサイン会やトークショーで盛り上がり4年目を迎えた。昨年は村上春樹やポール・オースターなどビックな作家も登場している。

 ユニオンスクエアの大型チェーン書店バーンズ&ノーブルがこのイベントの本部となり、無料サイン会が一日中行われる。別の会場、例えば教会やミニシアターでも、夜中まで作家のリーティングやトークイベントが3日間に約50イベントも開催されるのだ。

 有料イベントは約150名が定員のようで、人気作家のイベントチケットはすぐに売り切れになってしまう。今年、私が頑張ってチケットを取ったのは、黒人女性作家ZZ・パッカーとフィクション作家のデイブ・エガーズのトークイベントだ。ディブ・エガーズは独立系雑誌マックスィーニーで人気を得ているフィクション作家で『A Heartbreaking Work of Staggering Genius』(邦題:『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』)はベストセラーとなり、気になる作家の1人だ。ZZ・パッカーは、私はよくは知らなかったのだが、2000年夏号の『ニューヨーカー』誌に短編『Drinking Coffee Elsewhere』でデビューを飾ったフィクション作家だそうだ。会場となったバワリー・ボールルームに到着し、まずはバーで無料ドリンクを一杯いただき、午後10時前から彼らのテンポの良いリーディングが始まった。定員が少ない分、チケット取りには苦労したが、目の前で好きな作家と会えて、声が聞けるという感動はこういったイベントならでは。チケット代20ドルでは安いくらいだ。ZZ・パッカーはちょっと緊張していた様子だったけれど、最後の質問タイムには2人の作家さんの会話はまるでコメディのようで、会場から笑いが絶えないほどの盛り上がり振りだった。

 翌日、本部でZZ・パッカーのサイン会が3時から行われた。山積みされていた『Drinking Coffee Elsewhere』を片手に、ZZの列に並んだ。「昨晩のトークイベントに参加して、とても面白かったから是非作品を読んでみたくて」と、声を掛けてみた。「あら、ありがとう!」と照れ笑いをしながら答えてくれ、続けて「ところであなた日本人!?」なんて逆に質問が返ってきて、そのまま会話が始まってしまった。ZZは3ヶ月間、東京の浅草に住んでいた経験があると言う。しかも東京セサミプレイスで働いていたとか。なんだか、とてもカジュアルでフレンドリーな女性で、いままで知らなかった作家さんだったけれどいきなり親近感が持ててしまいファンになってしまった。

 読書イベントには思わぬ作家さんと書籍との出会いがあって面白い。今回のイベントで出会ったZZと、大胆な文字で"Dear Naoko, Much Luck"と書いてくれた彼女の短編集は、私にとっての特別な一冊となった。


September 22, 2003
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #19

 数ヶ月前からマンハッタン内の公園などでは、ワイヤレスでインターネットのアクセスが無料でできるサービスが拡大している。公園にパソコンを持って行って、芝生に寝転がりながらメールを送ったり、ネットサーフィンをすることだってできるのだ。

 米国の大型チェーン書店ボーダーズのカフェにもいよいよワイヤレス・インターネットのサービスが登場した。このサービスでお客さんが書店に足を運ぶ機会を増やすため、と何かの記事で読んだ。ボーダーズのカフェの場合は、一月に約30ドルをT-Mobileと言うサービス・プロバイダー会社に支払う。スターバックスにも同じT-Mobileが入っているが、スターバックスがあることで有名な大型チェーン書店バーンズ&ノーブルでは、このサービスは行われていないというのも面白い。

 レストランガイドブックで有名なザガットも"米国主要都市のワイヤレス・インターネットアクセスが使えるレストラン&ホテル"というタイトルを発売するらしい。高級ホテルのレストランで、いきなりパソコンを取り出してメールチェックなんかしたくない気もするが。

 公園に行っても、本屋に行ってもホテルでもレストランでも、マンハッタンはワイヤレスの波でいっぱいだ。

 ちなみに私もT-Mobileのワイヤレス・サービスを受けている。好きな時にいつでも素早くインターネットにアクセスできるのは便利、便利。そのくせいつも原稿締め切りが遅れちゃうのだけれど…。         スミマセン。


September 14. 2003
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #18

 いよいよ新学期が始まった。私が通うニューヨーク大学の出版学のクラスでも、3ヶ月ぶりに友達と再会し、いつもより明るい雰囲気が漂っている。学生の殆どは、すでに出版関係の職場で働いてる社会人で、キャリアアップを目指している人や出版社に転職を考えている人が多い。全体で約100名の学生のうち、私のような留学生は約20%を占めている。1クラス(約20〜30人)の中でアジア系の学生は1〜2人程度だが、ギリシアやフランスなどヨーロッパ圏からやってきている留学生の方がダントツに多いようだ。

 さて、今学期はスケジュールの関係で他学部の国際マーケティングというクラスを取ることになった。ビジネス系の学部とあってか、約30名のクラスにはアジア人が半分近く占めている。大学院に入学する前に通っていた語学学校には、アジア人がクラスの3分の2を占め、しかも日本人と韓国人が大半だったが、このクラスを受講している日本人は私1人で、韓国人はゼロ。皆、中国と台湾からビジネスを学びに来ているのだ。彼らの英語力はネイティブと喧嘩だってできるぐらい堪能だし、クラスの中での発言も多くバンバン意見が飛び交い、彼らのその活発さに驚いてしまった。

 出版学コースに入学して3学期目になり、他学部のクラスを改めて受講してみると他国のアジア人の様子が見えてきて面白い。今まで自分の語学力と、それに甘えてシャイになっていた部分に気づいて、とても恥ずかしくなってしまった。



September 7. 2003
前田直子