2004.August

■メール・フロム・ニューヨーク #49

 ニューヨークは11月の大統領選に向けて、さらにヒートアップしています。今週はマディソンスクエアーで共和党大会が開催されるので、党大会が始まる前から大きなデモが行われて、街中がその話題でいっぱい。"ブッシュ嫌い"なリベラル派が大半を占めるニューヨーカーは、ここぞとばかりに老若男女そろってデモに参加しブッシュの再選をなんとしても妨げようと、その勢いは留まることがありません。

リベラル派で民主党を支持する人が多いと言われるニューヨーカー。ダウンタウン、イーストビレッジの壁にはこんなアーティスティックな反ブッシュメッセージも。

 デモと言ってもただ単に"ブッシュ再選に反対"するのではなく、共和党の掲げる政治策に反対する――例えば"戦争反対" "銃規制" "同性愛結婚の認可""中絶認可"などをアピールするのです。大会が始まる前の週の金曜日には、エイズ対策への支持を求める"Naked Demo"(裸でのデモ=武器を持っていない証拠)といった突飛な人々が早々とデモを行ったというニュースが流れ、日曜日にはなんと10万人もの人が集まってマディソンスクエアー界隈を行進するデモが行われました。翌日のニュースでは、これらのデモで共和党大会が始まる前から300人以上もの人々が逮捕されたことが流れ、その熱狂ぶりが伺えますよね

 デモや集会を行うにも市への届けは必要で、今週は20以上のデモや集会が行われることが公開されているのですが、同時に"暴動に発展するのではないか"とか"テロへの警戒"などの心配事もニューヨーカーを脅かしています。街のあちこちに異常な数の警官や警察犬が警備にあたり、その姿は9・11の光景と重なって見えるのは、私だけではないはず。 そんな訳で、ニューヨーカーの中にはこんな物々しい状態に巻き込まれないよう、今週はバケーション休暇、あるいは自宅で仕事をする人が多いようです。デモが行われるエリア以外は、なんとなくスローで静かなのは、その影響もあるのかもしれませんが、なんとなく嵐の前の静けさにも取れる気もして…。ともあれ緊張感とともに、こんなにも多くの人が集まると、デモと言ってもなんとなくお祭り気分の雰囲気が流れているのも事実。

 普段は地下鉄を利用している私ですが、まさかの事態に巻き込まれないよう(?)、今週は友人から自転車を借りて自転車通勤でもしてみようかと、普段とは違う日常を楽しんでみたりもする予定です。無事に1週間が過ぎることを祈りつつ…。

同じ号で2つの表紙を作って、読者の目をキャッチすることはアメリカ雑誌界ではよく行われること。女性向け総合誌『レディース・ホーム・ジャーナル』誌では、ブッシュ夫妻、ケリー夫妻の表紙がレジ脇で目立っています。11月の選挙へ向けて、読者の興味を高め投票を促すための
企画だったよう。ちなみに、中身は全く一緒で、両誌ともにそれぞれのインタビュー記事が掲載されていました。

August 30, 2004
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #48

ユニオンスクエア南に建つこのビル。渦の中心部から煙がでていたり、岩石がくっ付いていたり、円錐棒がぶら下がっていたり、お隣のガラス張りの外壁には15桁のデジタル数字が絶え間なく数字を刻んでいたり、マンハッタンの中でも奇抜で奇妙でアーティスティックなビルディング。

(↑正面)
このビルの前を通る度に、不思議に思っていたのですが、ようやく謎が解けました。実はこのビル、99年に構築費300万ドルをかけ建築され、「メトロノーム」という可愛らしい名前まで持つビルディングだったのです。さて、この巨大なアートビルのパーツに込められたメッセージとは?

    (↑横から見たメトロノームビル)
渦巻きの周りにはゴールドが放射線状に広がっているように見えるけれど、これは溢れるエネルギー資源の象徴。コンクリートの片岩は、ビルの下に眠る地球の本体をイメージ。モクモクと吹き出る煙は、マンハッタンの内部に秘められたパワーを表し(この煙は9・11事件以降しばらく消えていました)、渦巻き状のレンガはエネルギーの拡大と、地球の自転を表しているとか。マンハッタンの街のイメージとはかけ離れて、かなり自然を意識したモチーフが沢山付いていたのですね。

    (↑夜のメトロノームビル)
夜になると余計に目立つ正面左の15桁の電子ナンバーは、実は…時計でした。左から6桁が0時から現在まで過ぎ去った時間。つまりは今の時間。右から6桁は今から24時まで残された時間。忙しなく変わる真中の3桁は、時間の感覚を鈍らせる為、アーティストからのトリックだったとか。一瞬一瞬に変わっていく数字を見ていると、マンハッタンの街の動きの速さが伝わってきます。

普段は何気に通っているビルでしたが、こんな意味が込められていたと分かるとちょっとウォーキングが楽しくなりますよね。

August 23, 2004
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #47

 アルカイダの文書が見つかったとかで、このところのニューヨークは緊張感が走ってます。朝の通勤時に地下鉄に乗れば、突然ポリスが各車両に入ってくるし、オフィスからワンブロック先に建つシティーコープビルには、機関銃を持った特別ポリスが人々の様子をチェックしているし、そんな様子を伝えるために各社メディアがアンテナを高々と伸ばした専用車をストリートに横付けして構えているし。警戒しなくてはいけないといっても、普通じゃ見れないその迫力と、特別ポリスの装備やら機関銃に思わずジロジロと目が行ってしまいます。

 警戒警報がイエローからオレンジに変わっても、ニューヨーカーの日々の生活は続き、気を付けようと思っても何に気を付けたらいいのか。最近、帰り道は地下鉄通勤をやめてバス通勤に変えたのだけど、バスにだって何かが仕掛けられることはありえるわけで…。

 と、あんまりネガティブなことを考えても仕方がなく、オフィスから聞こえてくる会話は「普通に毎日を過ごすしかないわよね」と、外の様子ほど緊張した感じはありません。外出する時に「テロリストを見かけちゃうかも…」なんてジョークを飛ばして出て行く人もいるぐらいで…。

 これよりもニューヨーカーの間で話題になっているのが、8月末にマンハッタンで開催される共和党大会について。ブッシュかケリーか大統領選も気になるところだし、民主党の多いニューヨークでの開催ということで何が起こるか分からないし、警備、警備で通勤もままならない、とこの週は休みをとってマンハッタンを離れるというニューヨーカーも結構多いよう。仕事を始めたばかりの私は、いきなり連休を取るわけにも行かず、歩いてでもオフィスに行って仕事をしていると思われますが、大きな事件が起こらぬよう…、そしてこの週は会社がお休みになるよう…密かに祈っている今日この頃です。

August 10, 2004
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #46

 街の書店にはビーチで読むお薦め書籍が並び、夏真っ盛りのニューヨーク。ニューヨーク・タイムズ紙には、ニューヨーカーの読書熱をさらにヒートアップさせるプロモーションがスタートしています。

 "The Great Summer Read: The New York Times Free Book Series"と呼ばれるこのプロモーションは、『グレート・ギャツピー』を始めとする文学作品が毎日同紙に折込まれてくるという、ニューヨークエリア限定のプロモーションです。  月曜日から毎日1〜2章分が掲載されて1週間後の日曜日には完
読できるというもの。16ページ、タブロイド版のこの折込は、本紙から外して単独でも持ち歩くことができるのであとでじっくり読むこともできて便利。

 7月12日からは『グレート・ギャツピー』(フィツェラルド著)、7月26日からは『ティファニーで朝食を』(カポーティ著)、8月9日からは『赤い薔薇ソースの伝説』(ラウラ・エスキヴェル著)、8月23日からは『母の色は水の色』(ジェイムス・マクブライト著)の4作品が掲載される予定になっています。

(写真)プロモーションが始まる前から、ニューヨーク・タイムズ紙には左のような広告が掲載されました。

"free gatsby! free chocolate! free breakfast! free water!"
「無料でチョコレート?朝食?水?…レストランの広告?でも無料ギャツピーってなんだ…?」と一瞬考えてしまいますが、その下には"The Great Summer Read: The New York Times Free Book Series"と書かれて、このプロモーションについてが書かれています。

 これらの書籍の版元の一つであるスクリブナー社担当者は「人々に素晴らしい文学を再び読んでもらうには良いチャンス。Amazon.comの"ルック・インサイド"のように、人々は本の中身を読み出すとつい購入したくなるもの」とパブリッシャーズ・ウィークリー誌のインタビューに答え、この折込が書籍の売上げに?がることへの期待を隠せない様子。

 ニューヨーク・タイムズ紙のオンライン版では、一般の人々が参加できるディスカッションのセクションを設け、また大型チェーン書店ボーダーズでも対象書籍のディスプレーを始め、リーディングイベントも開催してプロモーションをサポートしています。

August 2, 2004
前田直子