2004.January

■メール・フロム・ニューヨーク #31

 ニューヨークに戻ってきた。

 今年に入って米国の入国審査時には指紋押捺と顔写真撮影が義務付けられたと新聞で読んだ。観光など短期90日間の滞在ならばビサなしで入国できるのでこの義務は受けなくていいそうだが、学生ビザやその他のビザで入国する人は皆これらを受けなくてはならない。

 私は学生ビザで米国に滞在しているので、入国審査でパスポートとビザの確認、滞在目的などのお決まりの質問が終わると、「じゃぁ、ここに右手の人差し指のせて」と目の前の2センチ四方のガラス面に指を乗せるように係官から言われた。これが噂の指紋押捺。黒いインクパットの上に指を乗せて白い紙の上に指紋を押して行くのかと勝手にイメージしていたけれど(刑事ドラマの見過ぎ)、実際はもっとハイテク機材で驚いてしまった。ここから両手の人差し指の指紋を読み取ってコンピューターに登録される。指を押し付けるガラス面をよく見ると前の人の指紋がベタベタと残っているのに気付き"ゲッ"と思いそっと乗せていたら、係官に「もっと強く押し付けてくれる?」と言われ、前の人の手が綺麗だったことを祈りながら強く押して待つこと5秒。あっという間に登録完了。
 次は顔写真撮影。「は〜い、笑顔でねぇ〜。スマイル!」と係官は陽気に言うけれど、"テロリスト対策の警備の写真撮影時に笑顔はないだろう…"と思う反面、"いや、アメリカ人はこういった状況でも白い歯輝かして笑顔で望むものなのか…?""…ともかく機内で一応メークをしておいて良かった!"と考えを廻らしているうちに撮影終了。その間3秒。この指紋と写真は、その場で政府の犯罪人とテロリストのデーターベースで照合されるらしい。こんな困惑した笑みを浮かべたアジア留学生はすぐに弾き出され入国を済ませた。

 指紋押捺というと犯罪者のイメージがとても強いし、このデータがいつまで、どのように米国に保管されるのか心配な面もある。テロリスト対策とは言え米国入国は年々厳しくなる一方。いつになったら自由の国アメリカは戻ってくるのだろう。


January 20, 2004
前田直子


■メール・フロム・ニューヨーク #30

 お正月休みは久しぶりに一時帰国。お節料理とお屠蘇で日本の正月を満喫、満喫…と書きたいところだけれど、東京に着くや否や風邪を引き寝込んでいました。澄み切った青空を横目に、こんな形で寝正月だなんて。とほほ…。

 2日間でなんとか風邪をやっつけ、今年初の活動と言えば滅多に乗らない車を運転して東京駅まで親戚を迎えに行くという地味な活動。エンジンを掛けガソリンのメーターを見ると針が"E"を指していたので慌ててガソリンスタンドに寄る事に。「いらっしゃいませぇ〜」と元気の良い挨拶が聞こえてくると、ニューヨーク大学の先生(アメリカ人)が日本を訪れた時にガソリンスタンドに立ち寄った時の体験談を思い出して、外国人の視点って面白いなぁとニヤケ笑いが止まらなくなってしまいました。

 「いや〜、日本のガソリンスタンドのサービスはすごいんだよ。車がスタンドに入ると、すぐに制服を着た4人のスタッフが元気の良い挨拶とともに車に駆け寄ってくるんだ。給油機の前まで誘導されると、一人のスタッフがガソリンの種類なんかを聞いてくる。他のスタッフは頼みもしないのにフロントウィンドーを拭き始め、サイドとバックウィンドーとミラーまであっという間に綺麗にしてくれちゃうんだ。知らない間に一人のスタッフがタイヤの空気圧も調べてくれていて"タイヤ、オッケーです!"って、ここはカーレースのピットじゃないんだよ。全てのサービスが終わるまで30秒。信じられる?そもそも給油はセルフサービスが基本のニューヨークじゃあ、ありえないサービスと早業なんだ。支払いを済ませた後に、さらに信じられないことが起ったんだ。エンジンを掛け車を発進させると一人のスタッフが大通りに駆け出して、両手を広げてもの凄いスピードでやって来る車を体を張って遮って、僕の車が大通りに出やすいようにしてくれたんだ。ドキドキしながらバックミラーで彼のことを確認したら、"ありがとうございました!"って帽子を片手に深々とスマイルで挨拶してくれているんだ。彼の後ろにはクラクションも鳴らさずに大型車が待っているんだよ。彼が僕の車の犠牲者になってしまわないかと、バックミラーから目が離せなかったよ。」

 そう言われてみると確かに日本のガソリンスタンドのサービスは彼の言うとおり。アメリカでは殆どがセルフサービスだし(州によってはスタッフが給油を行わなくてはならない法律もあるが稀)、ましてや走ってくる車の前に立って車が出やすいようにしてくれるなんて考えられないサービスなのだから。今まで"それって普通。"と思って気付かなかったけれど、外国人から日本独自のサービスに感激されると改めてその良さを認識するし、"へへっ"と誇り顔で笑いが出てしまう。


January 13, 2004
前田直子